ギンザグリングラス ~メジロマックイーン唯一の後継種牡馬~

2021/11/15

 

(写真はエレディターレ)

皆さま、こんにちは。京都サラブレッドクラブです。

 

今回はメジロマックイーン産駒のギンザグリングラスを種牡馬として所有されている蔵内 優子さんにお話を伺うことができましたので、そちらの内容をお届けします。

 

―この度は取材にご協力いただきありがとうございます。まずは蔵内さんとギンザグリングラスとの出会いについてお聞かせください。

 

蔵内さん「ある日SNSで見かけたギンザグリングラスのパドック写真が最初でした。数枚あり特に横顔の写真に釘づけになるほど魅力を感じて。調べると川崎競馬に所属していて、よし!次のレースに現地行ってみようと。次の出走は運よく休診日で現地観戦が叶い、それからは引退まで全レース、途中からは横断幕も張り応援しました(笑)」

 

―JRAでも特定の馬が出走するレースを現地観戦し続けるというのは大変だと思いますが、地方競馬だと出走回数も多いので並大抵の人にはできないことですよね。しかし、ご自身の所有馬ではなかった馬を種牡馬入りさせるというのは難しそうな気がするのですが、経緯をお聞かせいただけますでしょうか。

 

蔵内さん「そうですね(笑)レースですが偶然私が休みの日に走ってることが多く、時間帯も遅い時間が多かったのが幸いしました。某南関の調教師の先生経由でギンザグリングラス調教師(当時)の山田正実先生とお話して厩舎で会わせてもらう事が出来、それと前後して南関ルールを知り(10歳までに一定以上のクラスにいないと自動的に南関引退になるルール)何とかしてあげたいと思いました。全てはそこから始まりました。」

 

―種牡馬入りしてからのギンザグリングラスについて、この馬の特徴を表すようなエピソードがあればお聞かせください。また、種牡馬としての特徴、魅力はどういったところでしょうか。

 

蔵内さん「引退後、最初に種牡馬として旭牧場に繋養していただきました。旭牧場は先代がスカレーというアラブ全盛期の名種牡馬を輩出した牧場で余談ですがイケノコスモス、ゴーディー、スカレークインなどが現在スカレーの血統が入っていて、先日スカレークインは繁殖入りしたとのことです。色々な所で血統が継がれており感慨深く・・・。

旭牧場オーナー木村信勝さん(当時)が言われていたのが馬運車から初めて降りてきた時のビビリや警戒、そして周囲の状況を把握すると仔馬に優しくブルル・・と馬語で話したり、遠くの牝馬に向けて嘶いたり自分の役割を理解しているかのように行動するあたり、非常に頭が良いなとのことでした。また、危険を察知する能力がとにかく高いので怪我につながるような動きをしないそうです。フィジカル面では身体の強さ・丈夫さが際立ち、ギンザグリングラス自身がそうであったように、産駒も総じてタフなタイプが多い印象です。脚部はほんとに丈夫ですね。

現在は白馬牧場で繋養していただいています。ファンの方が見学にいらっしゃることも結構あるそうで、そんな幸せそうなギンザグリングラスくんの写真をいただいたりSNSで拝見するとほんとうにありがたいし嬉しいなと思います。

メジロマックイーンの直系ということでステイヤーなのではないかという見方をされる方が多いと思いますが、ギンザグリングラス自身が現役時代に芝の1200mで勝ち星を挙げているように、個人的には短距離でも中距離でも活躍する産駒が出てくるのではないかと考えています。」

 

―血統だけ見るとステイヤータイプかなと思ってしまいがちですが、スピードも秘めているんですね。蔵内さんはギンザグリングラスを種付けする繁殖牝馬をご自身で所有されていますが、繁殖牝馬を選定する際の基準などを、お答えいただける範囲で結構ですのでお聞かせください。

 

蔵内さん「繁殖牝馬は不思議とタイミングよく出てくるのですが・・意識しているのは、『その馬自身や近親がJRAで勝ち星を挙げて活躍しているか』。あとはレコード勝ちや重賞勝した馬がかなり近い近親にいるなど。ウインプライマリーとラナチュールは名門牝系のひとつとして知られる*ファンシミン系で目黒記念(G2)勝ち馬ホクトスルタンの半妹なので、この馬にギンザくんを種付けすれば、ホクトスルタンと似た配合の馬を生産することができるということを意識しました。牝系と父系が同じですからね。血統表でいうと一番上と一番下のラインがホクトスルタンと同じに。これはギンザグリングラスというマックイーン父系種牡馬がいないと絶対できないので、存在意義の一つでもあるかな?と思いました。それもホクトスルタン君への一ファンとしての想いですね(笑)私は口下手なのでファンの方にもなかなか伝わりませんが。運よく軽々やってる風に見えてるのかもしれないな(苦笑)。しかしなかなかラナチュールは受胎しなくて、5年がかりでかなりの苦労の末やっと産まれた子が今回募集されているラナチュール2019ことエレディターレです。」

 

※ファンシミン系:ルヴァンスレーヴ、アドマイヤマックス、ソングオブウインドなど活躍馬多数。

 

―なるほど。ホクトスルタンは「メジロマックイーン×ダイイチアピール」のカップリングで誕生した馬ですので、ダイイチアピールの産駒であるウインプライマリーやラナチュールにメジロマックイーン産駒のギンザグリングラスを種付けすることで「父メジロマックイーン系×母ダイイチアピール牝系」を再現したということですね。

↓ホクトスルタン

 

 

↓エレディターレ

 

 

―複数頭いるギンザグリングラス産駒の中からエレディターレ(ラナチュール2019)を京都サラブレッドクラブにご提供いただくこととなった経緯についても教えていただけますでしょうか。

 

蔵内さん「エレディターレに関しては牧場の方から『この馬なら順調にいけば中央でも通用しそうですよ』という話を聞いていましたので、何とか中央でデビューさせてあげたいという思いがありました。せっかく中央で走るなら山上さんのようにこれまで個人でたくさん馬を所有され、中央の重賞勝利も経験されているような馬主さんの下で競走生活を送らせてあげた方が多くの方の目に触れることになりますし、競走成績自体もより良いものが期待できるのではないかと考え、引き受けてくださる馬主さんを探していたんです。そんな中、京都サラブレッドクラブさんという一口馬主のクラブが設立されたという話を聞き、ギンザグリングラスの生産者である中脇さんを介して代表の山上さんとお話する機会を得ることができました。珍しい種牡馬の産駒といえども、個人所有であれば大きなレースを勝たない限り、長期間多くの注目を集め続けるということは難しいですが、クラブで募集されたら多くの方が携わることになりますから、より多くの方に見てもらえることになります。私はなかなか他人にものを頼んだりできない性格なのですが、ここで勇気を出さなければきっと後悔してしまうと思ったので、募集馬のラインナップに加えてもらえないかお願いすることにしました。その結果引き受けてくださりエレディターレが募集馬に加わることになりました。」

 

 

―JRAでレアな種牡馬が出走する際には話題になりますからね。話題になることによって”ギンザグリングラスが種牡馬入りしている”、”メジロマックイーンの直系は現在も残っている”ということを多くの方が認識するようになり、他の生産者さんからも種付けの申し込みが増えてくるようになれば最高ですね。

 

蔵内さん「これまではプライベート種牡馬としていましたが、関係者の方から『Fee(種付け料)をつけた方が種牡馬ラインナップに出てきて記録に残るし、つけたほうがいいと言われ今年からFeeをつけるようにしました(20万)。他からの申し込みも来てほしいですね(笑)」

 

―まずはエレディターレがJRAで活躍し、ギンザグリングラスの知名度を高めてほしいですね。ありがとうございました。

 

競馬の歴史上、輝かしい競走成績を持たない馬が、種牡馬としては大成功したという例はいくつもあります。海外の例でいうと、未勝利馬ながら種牡馬入りし、凱旋門賞馬エリシオをはじめ多くの活躍馬を送り出したフェアリーキング、日本では1勝馬ながらG1馬カンパニーを送り出したミラクルアドマイヤなど。ギンザグリングラスもこれらの種牡馬に続いて新たな成功例となってくれると嬉しいですね。まずはエレディターレに代表産駒となってくれることを期待しています!