4歳世代を振り返って

こんにちは、北枕鳩三郎です。
現4歳世代から京都サラブレッドクラブさんの募集馬選定に携わらせていただき、今年で4年目となりました。
これまでの2世代においては、会員の皆様のご期待に添える結果とは言えず、大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。
相馬の世界においては、先を見通す力が必要不可欠です。それは、どのビジネスでも同じ。常に先へ先へ、前を向いて正しい道を模索していくしかありません。しかし、新たな世代の募集馬についてお話しする前に、まずは結果の検証と、それに対する反省をしっかりとして、会員の皆様にお伝えする義務があると考えました。クラブにお願いして、この場を用意していただきましたが、これからはできるかぎり、募集馬に関する情報を発信していければと考えております。
まずは4歳世代の振り返りとなりますが、現在は京都サラブレッドクラブの元を離れ、別のオーナー様の所属で現役生活を送る馬もいるため、ここでの見解は、あくまで、京都サラブレッドクラブ所属時の私見であるとお考えください。
デュアルブレイド号は屈腱炎の発症で、一度も中央のターフを走ることなくファンド解散となりました。サマーセール落札価格は275万円。ステイゴールド系らしくコンパクトな馬体の造りで、ピリッとした気性の持ち主。いかにも芝の中距離馬という印象で、北海道から本州に移動してからはグンと馬体に身が入り、関係者から素質の高さを伝え聞くたびに期待が高まりました。
しかし、同時に腱への負担が通常の馬よりもかかっていることも獣医さんの見解として発表され、それはクラブ公式にもタイムリーに掲載されています。2歳の若駒にはよくあることだという楽観的な考え方と、それは現役を続けていくなかで常に付き合っていかなければならない課題なのか、関係者によっても見解が異なるところではありました。
結果的にトレセンでのハードな稽古を消化する前に屈腱炎を発症してしまいました。レースを使いつつとかではなく、デビュー前の出来事です。結論として、携わっていただいた関係者様、誰一人として落ち度はなく、すべて選定に携わった自分の責任であります。
芝向きの素質馬を仕入れることを命題として臨んだサマーセールでしたが、いくつかの教訓と学びをデュアルブレイド号から得ることになりました。しかし、同時に北枕が選ぶ馬は故障しやすいと、会員の皆様に不安な思いをさせてしまうきっかけにもなりました。
続いて、アリストロシュです。2歳のトレーニングセールであるブリーズアップセールにて1155万円で落札。セール前日の公開調教よりも前段階の1週前から下見を重ね、一番良いと思った馬を落札していただきました。クラブの同世代の募集馬はダート向きの血統馬が多く、軽さのある芝馬を選ぶのが自分の役目だと理解していましたので、歩様のバネ感を重視して選んだ記憶がございます。
しかし、戦績としては10戦して未勝利。基礎スピードが足りないようなレースが続き、勝ち上がることができず、ファンド解散となりました。何度も競馬場で本馬を確認しましたが、個人的な印象としてはデビュー戦である新馬戦の時が、他馬との横の比較を含め一番良く映りました。結果的に、早熟傾向にあったのか、セール当日からデビュー戦までの間が本馬のピークだったように感じています。その後は調教師のコメントにもあったように、成長力で同世代のライバルたちに劣っていたのだと推測されます。成長力の部分で伸びしろを掴み切れなかった自分の落ち度です。多くの会員さんにご出資いただき、しかも、追加募集から早い段階で満口になるほど期待の大きい馬でしたので、信頼を大きく裏切ってしまった自負もございます。
デュアルブレイドとアリストロシュの2頭に共通しているのは、ブラックタイプや血統は二の次にし、実馬の良さを重視していたところです。セリにおいてはライバルが少なくなる要因でもあるため、限られた予算のなかで戦うには理にかなっていると、今でもそう思っております。しかし、アグネスタキオン(故障率)やヘクタープロテクター(早熟性)という血の特徴をよく理解していたにもかかわらず、目を背け、自然と長所だけを見るようにしていたのかもしれません。情けないかぎりです。
競馬歴でいえば、高校時代に新幹線で上京していた頃を含め34年が過ぎ、その間、一貫としてパドックの最前列で実馬をみることに拘ってきました。セレクトセールには第2回から27年続けて毎年参加し、各クラブの募集馬ツアーも20年以上、参加し続けることで、たくさんの名馬の1歳時の姿を記憶と記録に留めてきました。それらすべてが自分の財産であり、いまの礎となっています。しかし、結果が出なければ、それはただの素人の自己満足に過ぎません。あとに続くパドック派の皆さんのためにも、少しでも努力が報われる世界であることを証明したい気持ちもあります。京都サラブレッドクラブさんだけではなく、他の馬主さんとの交流のなかでも誇れるほどの実績はありませんが、それでも各方面の方々から一定の評価をいただけていることに感謝し、少しでも会員の皆様のご期待に応えられるよう、相馬の精度を上げる努力を続けてまいります。
引き続き、よろしくお願いいたします。
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北枕鳩三郎 氏 プロフィール
約34年間、パドックの最前列にこだわり続け、学生時代には年間365日、JRAと南関東競馬のパドックに立ち続けたことも。競馬場以外にもセレクトセールやサマーセール、一口馬主募集馬ツアーに参加し、現役馬から1歳馬まで数えきれないほど馬体を見続けてきた。その馬見に関してはネットを中心にカリスマ的人気を誇る。
京都サラブレッドクラブでは、2022年より募集馬選定に携わる。