第15回 屈腱炎について~代表・山上和良~
2026/04/17

屈腱炎(浅指屈腱炎)は競走馬にとっては、宿命的に避けられない怪我であることは、よくご存知であろうかと思います。
浅指屈腱は、バネの働きをしているとよく言われます。前肢が着地した時にもっとも引き伸ばされ、飛んだ時に縮み、その弾性エネルギーを推進力として利用しています。
浅指屈腱は、組織レベルでは細いコラーゲン線維が束になった状態で、その一部が断裂すると断裂部位が炎症を起こし、屈腱炎を発症します。
屈腱炎の原因については、個体差もあり一概には言えませんが、熱変性に原因があるのではないかと考えられています。
フルギャロップの時間が長いほど、腱に熱を持ち、それが蓄積されていくごとに腱は変性を起こし、最後に何かをきっかけに部分断裂すると考えられています。
ですから、短距離馬より中長距離馬のほうが屈腱炎を発症しやすい、コースで追い切るよりは坂路のほうが腱への負担は少ないというようなことになるわけですが、だからといって長い距離を走らないわけにもいきませんので、現在ではレース後あるいは調教後の水冷が徹底されています。
JRAの厩舎以外だと、氷で冷やしているという話を聞くこともありますが、水冷のほうが効果は良いらしいので、日々の調教後なるべく早く水冷するというのを徹底できれば、屈腱炎を減らすことが可能となります。
屈腱炎は長い期間を経てじわじわと変性が進むわけですから、発症したその瞬間に管理していた関係者に全責任があるわけではありません。そのあたりは注意が必要です。
浅指屈腱炎について、最近は特に再生医療を中心とした様々な治療法が試みられております。
しかし、いまだ完全に元の状態にまで治るという治療目標にはほど遠く、おそらく今後も難しいと、私個人は考えています。
見た目には断裂した部位が治癒したようであったとしても、伸縮する働き(弾性エネルギー)が以前の状態に戻っているとは考えにくく、そのため再発も多いです。
したがって、時間やコストをかけても、ほとんどのケースでは、そのかかった経費を取り返すことはできません。
当クラブでは、屈腱炎を発症した馬については、よほどの事情がない限り手放すという方針を徹底しています。
それが会員の皆様の収支にとって最善と考えているからです。